top of page
  • 執筆者の写真masa

2月10日は、「聖パウロ難破」の祝日!

更新日:2021年2月10日

 2月10日は、マルタでは聖パウロの難破(San Pawl Nawfragu)を記念した祝日です。マルタはカトリックが非常に浸透している国で、さまざまな祝日がカトリックに関連しています。ただ、この「聖パウロの難破」に関する祝日はおそらくマルタ固有のものでしょう。そもそも、「聖パウロの難破」とは何のことなのでしょうか。


 聖パウロはカトリックおいても非常に重要な人物で、とみにその名が知れ渡っています。「パウロ(サウロ)の回心」は絵画でもよく扱われる題材といってもよいでしょう。聖パウロは回心後、数回に及ぶ伝道旅行を行いましたが、エルサレムで捕まり、ローマへと送られ、そこで殉教します。

ヴァレッタの聖パウロ難破教会の祭壇裏にある画

使徒言行録28章には、次のような記述があります。


「私たちが助かったとき、この島がマルタと呼ばれていることが分かった。島の住民は大変親切にしてくれた。雨が降りだして寒かったので、たき火をたいて、私たち一同を迎えてくれたのである。パウロが一束の枯れ枝を集めて火にくべると、一匹の毒蛇が熱気のために出て来て、その手に絡みついた。住民は彼の手に蛇がぶら下がっているのを見て、互いに言った。「この人は人殺しに違いない。海では助かったが、正義の女神はこの人を生かしてはおかないのだ。」ところが、パウロはその蛇を火の中に振り落とし、何の害も受けなかった。体が腫れ上がるか、あるいは突然倒れて死ぬだろうと、彼らはパウロの様子をうかがっていた。しかし、いつまで待っても何も起こらないのを見て、考えを変え、「この人は神様だ」と言った。さて、この場所の近くに、島の長官でプブリウスと言う人の所有地があった。彼は私たちを歓迎し、三日間、手厚くもてなしてくれた。時に、プブリウスの父親が熱病と下痢で床に就いていたので、パウロはその人のところに行って祈り、手を置いて癒やした。このことがあったので、島のほかの病人たちもやって来て、癒やしてもらった。それで、彼らは私たちに深く敬意を表し、船出のときには、私たちに必要な物を持って来てくれた。」 使徒言行録28:1-10, 新共同訳聖書

 聖パウロが上陸されたとされる島(St Pail’s Islands)は現在は無人島ですが、彫像があり、その近くの街は、San Pawl il-Bahar (St Paul’s Bay:セントポールズベイ) 、まさに「聖パウロの湾」と名付けられています。このセント・ポールズベイには、島の住民が聖パウロのために火を焚いたという伝説がある場所に建てられた礼拝堂があります。


右:真ん中とその右に見える小さな島に聖パウロが上陸したとされる  また、マルタ中部ラバトには、聖パウロが実際にいたとされる洞窟も残されています。この使徒言行録の引用部分に出てくる、当時の島の長官プブリウスの家があったのが、イムディーナにある現在の聖パウロ司教座聖堂だとされています。このプブリウスは受洗し、マルタの初代司教となったとされています。プブリウスは1634年に列聖されました。聖パウロとともに、聖プブリウスもマルタの守護聖人として知られています。なおマルタの守護聖人にはもうひとり聖アガタがいますが、全員がマルタにゆかりのある聖人です。


ラバトにある、聖パウロ教会。右の扉の奥の下あたりに、聖パウロの洞窟がある。

 マルタでは、聖パウロは絶大な人気を誇っているといっても過言ではないでしょう。聖パウロに捧げられた教会だけでなく、ラバト、サフィ、ムンシャールといった地域の守護聖人は聖パウロです。ラバトにある聖パウロの洞窟には、ヨハネ・パウロ2世も訪れました。なお、マルタでは聖パウロは本と剣だけでなく、炎と蛇も合わせて描かれることもあるようです。

 蛇足ですが、マルタでは、聖パウロの難破以降、連綿とキリスト教(そしてカトリック)の歴史が続いているという説と、アラブ支配期にキリスト教は途絶えているとする説とで分かれています。ここには、聖書での記述を史実と捉えるかどうかという問題を孕んでいますし、マルタ社会におけるカトリックの強烈な浸透という背景があるといえるでしょう。


フェスタの日の聖パウロ難破教会(ヴァレッタ)

 さて、ヴァレッタにある、聖パウロ難破教会では、この日が盛大に祝われます。この教会は17世紀、18世紀にそれぞれ建て直されました。通常であれば、この日には、聖パウロの像が人々によって担がれ、教区中を練り歩くのですが、残念ながら新型コロナのため、今年は見ることができません。ただし、飾り付けは行われていて、セントポール・ストリート(St Paul's Street/Triq San Pawl = 聖パウロ難破教会がある道)では、祝祭の雰囲気を感じられます。パンデミック期にはやはり各教会の恒例のプロセッションが見られないのが残念ですが、気分だけでも「祭り」を味わってみてください。



聖パウロゆかりの地

- 聖パウロ大聖堂 イムディーナ(Mdina)

- 聖パウロ教会と洞窟 ラバト(Rabat)

- 聖パウロ難破教会 ヴァレッタ (Valletta)

- セントポールズベイ(St Paul's Bay/San Pawl il-Bahar)



閲覧数:222回0件のコメント
bottom of page